以上で主な帝陵は見終わった。初代の嘉隆帝のものが残っているが,これはフォン河を大分遡らないといけないので,今回はパス。
「次は寺だね」
そう言ってドライバーは車を走らせる。また雨がしょぼ降り始めた。水たまりだらけの道をレンタル自転車で走る欧米人観光客をまた何人も見かけた。うらやましいほどの体力と気力。天気がよければ僕もやりたい気もしたが・・・まあ,地図を無視してすぐに横道に逸れたがるから,きっとろくことにはならないだろう。

いつか車は松林の中を走っている。もうどのあたりなのかさっぱりわからない。止まった所には何もない。
「ここからちょっと歩くよ」
小道の先に塔が立っていた。霧雨に包まれた松林。その中にひっそりと浮かぶこの白い塔は,なかなか印象的だ。

そして左手に寺への入口。トゥヒェウ寺だ。三つのアーチを持つこの門は,寺の門というよりはちょっとした城・宮殿の門構えのようにも見えた。
門をくぐると,中島のある楕円形の池。翡翠色の水面に小さな雨滴がいくつも輪を描くのが,この静かな前庭の中の唯一の動き。それを眺めながら,端をまわって本堂へ。
そこで拝観かと思ったら,ドライバーはその横の僧坊の方へ歩いて行く。あれ,いいのか? 勝手にそっちに入り込んで,と後ろからついて行く僕は心配したが。
どうやらここの住僧に知り合いがいるようだ。中から出てきた同年配の僧侶と親しげに挨拶した後,小さな卓についてちょっとお茶をいただく。ジャスミン茶のような香りのいいお茶だった。
しばらくドライバーは僧侶と四方山話。言葉のわからない僕は,もの珍しげにあちこち見回す。
・・・ふと気がつくと,僧侶たちが近くに集まってきていて,ちょっとどぎまぎする。信仰の場所の裏の空間に物見遊山の観光客が入り込んでるのだから,腰の据わりも悪くなろうというもの。でも,ぺこりと会釈をしたら柔らかな表情で微笑んでくれたので,少しほっとした。
案内された本堂の中は薄暗く,香の匂いが染みついていた。いかにも年経た古刹らしく,気持ちが落ち着く。
奥の6畳間くらいの広さの部屋にご本尊が安置されている。金箔がきれいに貼られた三尊像。見たところ,釈迦如来か阿弥陀如来のようだった。・・・ヴェトナムの仏教は,他の東南アジア諸国とは違い,中国から入った大乗仏教。禅と浄土教が融合したようなところがあるらしいので,おそらくそのどちらかで間違いないと思う。
仏像のお顔は,日本のものとさほど変わらない。このまま日本の寺の本堂に安置しても違和感はまったくないだろう。東南アジアの仏像というと,ちょっと変わった造形感覚でできているイメージがあるが,それとは全く違う。こんなところにもヴェトナムが中国文化の影響を受けてきた痕跡が残っているわけだ。

お礼を言って外に出る。
敷地の脇に塀で囲まれた墓らしきものがあった。ストゥーパの形に似ているところを見ると,住職たちの墓所のようだ。墓碑銘は漢字だったが,苔むしていて誰が葬られているのかは読み取れなかった。
もしかしたら阮朝皇族・貴族たちの墓なのかもしれない・・・。見たところ格式のある寺ではあるが,それにしても僧侶の墓にしては立派すぎるような気もした。
BGM NOW CLAZZIQUAI PROJECT/Color Your Soul[★★★★★] |
- 2008/12/19(金) 10:07:27|
- フエ(越南)
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