それにしても暑い。
天気が回復したおかげで,着ている藍色のシャツが熱を吸収してくれる。そういえば,民族衣裳の女性たちはけっこう厚手の生地でしかも重ね着しているが,慣れているのだろうか。
更に道を進むと,大型のバスが三叉路に停車していた。行先表示はラオカイ。ここまで僕らが乗って来たのと同じ古いタイプだ。きっと共産主義だった頃の東欧あたりから譲られてきたものだろう。
既に客がかなり乗り込んでいた。その中には少数民族の女性たちも。鮮やかな色合いの衣裳のおかげで,古びたバスがちょっとだけ華やいだ感じになっていた。
ふむ。
何だかお腹が空いてきた。時計を見るともう12時近い。
しかし,これまで歩いてきたところ,あまり食堂らしい店が見当たらなかった。ガイドブックを見るに,外国人向けの店が市場前の通りにはいくつかあるようなのでそこでもいいわけだが・・・外国人向けの店は値段が高めだし,何より現地の人の食べる料理や味つけになっていないので,その土地で食べたという気がしないのだ。
まあ,市場の中にあるかもしれない。あれだけ人が集まっているのだから,食べ物を供する店がないと皆困るだろう。
市場の門をくぐったところに,見込どおり1軒あった。前に通った時には商売や民族衣装に気を取られて,視野に入っていなかったらしい。

露天の低いテーブルに座り込み(椅子はよくあるプラスチックの風呂場椅子),ボディランゲージで「何ができるの?」
「これだよ」
中年の女性が見せてくれたのは麺。北部だからフォーになるのか?
これを出し汁で煮て,カリカリに揚げた豆粒のようなタニシをざらざらっと載せる。あとはお好きなように香菜と香辛料を入れて召し上がれ,ということらしい。
・・・貝,か。大丈夫だろうか?と,一瞬悩んだが,油の高温で処理されているから寄生虫がいたとしても死んでいると踏んだ。一杯いただこう。
にこにこしながら作ってくれたそれは,なかなかイケる味だった。香辛料など入れなくても,ぴりっと辛口で箸が進む。
夢中で食べていると,肩ごしに英語で声をかけられて我に帰った。振り向くと同じツアーのフランス人老夫婦。彼らもどこで昼を食べたものか悩んでいたものらしい。
「君が座って食べてるから聞くけど,そのヌードル,うまい?」
「僕はおいしいと思うけど」
とつおいつ丼を眺め,奥さんと話し合った末に彼らもこの店の客となった。体格のいい白人が低い風呂場椅子に二人も座ると,テーブルが小さく見える。
「ところで,僕らは君がいたからこの店に座ったんだが,君はどうしてここを選んだんだ?」
そう聞かれても困る。確たる理由などないのだ。強いて言えば,食い意地の張った野生の勘というやつ・・・もちろん,そんなことはおくびにも出さなかったが。
こういうアジアの食べ物に慣れていなさそうな奥さんに食べ方を教えて,僕はお先に失礼した。少なくとも夫の方はこれを気に入ったようだったので,何だか責任を果たしたような,ほっとした気分。
BGM NOW 中島美嘉/FIND THE WAY[★★★★★] |
- 2008/03/29(土) 13:12:29|
- 北部(越南)
-
| トラックバック:0
-
| コメント:0