道はもう坂を下り切った。既にごく普通の町並みだ。
午後になると,何だか気だるい空気が漂っている。12月の北部,暑いというわけでもないのに。日なたにいるのは市場へ行き来する人と遊ぶ子供たちぐらいだ。
開け放した民家の扉,中から聞こえるラジオの声。ヴェトナム語は声調が6つもあるので,歌うように聞こえるのがいい。
建てかけの家がある。丸い木の柱に角材の梁の構成はこれ以上ないくらいシンプル。柱と柱の間に割竹をざっと縦横に組んである。これに壁土を塗るんだろうか。前後に庇を突き出した形で同じ大きさの家をこの近所でよく見かけたので,住宅の規格があるのかもしれない。
そんなことを考えながら進んでいくと,T字路に突き当たった。
正面には立派な白亜の建物。金星紅旗が翻っているので,おおかた人民委員会(地方行政機関)か何かだろう。・・・文句をつけられても困るので,さすがに写真は撮らなかった。
さて。
どちらへ行こうか? 考える間もなく足の向くまま右へ曲がった。舗装された道に少し土が乗るようになる。稲株だらけの田圃があちこちに見える。いかにも田舎の中心集落のやや外れといった雰囲気だ。
何だか,そこはかとなく視線を感じる。どこか物珍しそうな,好意的とは言えないがはっきり非好意的とも言えない視線。普通,バックハーを訪ねる外国人はこんな何もない所まで一人でのこのこ歩いて来たりはしないだろう。申し訳ない,一人歩きの好きなただの物好きなので,大目に見てやっていただきたい。
左に大きく道が曲がった地点に,大変立派な建物が鎮座していた。さっきの人民委員会らしい「きれい」な建物とは対照的に,薄ら汚れたというか黒ずんでいるというか。だが,形は左右両翼と見事な玄関階段をもったシャトー風。フランスの田舎にあっても違和感がない。
窓の上には飾りのアーチ。ぴたりと閉められた古めかしい鎧戸。後ろに見える棟には小さな尖塔まで。間違いなく植民地時代の遺物だ。インドシナ総督府高官の避暑用邸宅ででもあったのだろうか?
今は誰も住まっていなさそうな建物。サイゴン(ホーチミン市)やフエ,ハノイなどではこうした植民地時代の建物も,中を分割してアパートとして人が住んでいたり,美術館や博物館,行政機関として活用されているのをよく見かけたが。
物寂しい荒れかけた庭には,子供たちがボール遊びに興じる歓声だけが響いていた。
BGM NOW Kraftwerk/The Robots[★★★★] |
- 2008/04/09(水) 08:45:38|
- 北部(越南)
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