16時。
市場の前の道は人通りがぐんと減っていた。というより閑散。
中に入ってみたら,もう肉屋の一郭は店仕舞い。建物を管理しているらしい男が,コンクリートの床に水をバシャッとぶちまけながら掃除中だ。
その他の露店も,今日の商売はもう終わり,としわくちゃのドン札をまとめて勘定していたり,所在なげに煙草を吸っていたり。
市場の出口のアイスキャンディと揚げ餅売りも既に姿が見えない。やや斜めに射し込むやわらかな日光が作る長い影が,何ともうら寂しげ。
街全体に「祭りは終わった」みたいな,ちょっとアンニュイな,けどまだ興奮の余韻が残ってるような,ちょっとした風情が漂っている。これはサパでは感じなかったことだな。
その気分をぶち壊すかのように(聞きようによっては「引き立てるように」とも表現できる・・・),頭上に落ちてくるラジオか何かの音声。昔の町内放送みたいに出来の悪い拡声器を経由したような。
この割れ鐘のような音は一体どこから?ときょろきょろ見回す。・・・あ,あった。北河祠の裏手の丘の廃虚みたいなところに大きな拡声器が。
あの建物みたいなのは,何だろう? また好奇心に火がついた。どこから登ればいいんだろう?
そちらの方向へ歩いて行くと,北河祠の通りの先に上り坂の分かれ道があった。たぶん,これだろう。固く締まった土の道。下も上も民家。ごく普通の生活道だ。
「うゎんわんわんわんっっ!」
びっくりした。突然耳元で犬に吠えかけられてしまった。ちょうど家の庭の面がそのくらいの高さにあったもので,植え込みに隠されて犬の姿が全然見えなかったのだ。
犬も驚いたのだろう。匂いの全然違う見知らぬ人間がひょこひょこ自分のテリトリーの前を通り過ぎるのだから。
しばらく進んだ所に,更に上に向かう細い道が取りついていた。がなりたてる音の方向は確かにそっちだ。
山道と変わらない,急勾配で細い道。その代わりに視界は広がり,バックハーの街がよく見える。もっとも牛だか水牛だかの落とし物がそちこちにあって,あまりよそ見をしていると危ないのだが。

行く手に廃虚が見えた。煉瓦と切り石をしっかり積み上げて造った,物見塔のような建物。屋根はすっかりなくなって,煉瓦と煉瓦の隙間から雑草が茫々と生えている。いったい何だったのだろう?
その先に進むと,本当にバックハーの街が足下に。そのずっと向こうの山々も一望のもとだ。あの小川の流れも遠くに見える。
・・・すっくと立ち上がった草の茎の先端に,レモンイエローのスイートピーみたいな花が存在を誇示していた。
BGM NOW Celine Dions/Love is on the Way[★★★] |
- 2008/04/25(金) 12:53:06|
- 北部(越南)
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