10:10,予定どおりにバスは動き出す。
窓の外のランコーの村は妙に居心地がよさそうに見えるが,ガイドブックを見ると相当不便らしい。こういう牧歌的なところは,実はあまり快適ではないのかもしれないが,旅人の目はすぐにだまされてしまう。
そうこうするうちに道は坂道となり,いよいよ本日のメイン,ハイヴァン(Hải Vân)峠にかかる。ヴェトナムの背骨をなすチュオンソン(Trường Sơn:長山)山脈が海に張り出した部分だ。漢字表記では「海雲」,その名のとおり北部と南部の気候の境目になっている。実際,このたった2時間の間に涼しい「冬」から温かさを通り過ぎてそろそろ暑さに近づこうとしているのが実感できた。
むちゃくちゃな急坂というわけではないのに,バスのエンジンはうんうん唸り出し,20km/hくらいにスピードダウン。延々と続く九十九折りの道をどんどん上っていくが,いつになったら峠を越えるのか全然見当がつかない。道路際に小さな祠がいくつもあって,誰が祭っているのか大抵きれいな花や線香らしきものが供えてあった。日本の道祖神みたいなものだろうか。
ふと左手を眺めると,下の方青い南シナ海に白く波が押し寄せている。右手には露出した岩盤を湧水がつたって流れ落ちる。海の間際にこんな険しい山塊が迫っているなんて,驚きだ。とはいうものの,峠の高さそのものは500mもないのだが。
遅いスピードのせいでずいぶん長いことうねうねやっていたように感じたが,実際には30分もしないで峠に到着した。
なぜかここでも休憩。たくさんの自動車,バス,トラックが停まっている。ドライバーたちはレストハウスに姿を消し,観光客はカメラを取り出し記念撮影に余念がない。そして彼らにまとわりつく大勢のお土産売り。
あとは下るだけだから速いだろうと思ったら,前をハノイ〜サイゴンの満員バスがふさいでいる。おまけにエンジンがよくなくて,やたらと黒々とした排気ガスをお見舞いしてくれる。おかげで窓を閉めなければならなかった。せっかくいい風が入ってきて気持ちがよかったのに。道路の補修工事も盛んで,時々止まって対向車をやり過ごすこともあった。交通の大動脈なのだから,もっといい道になるといいとつくづく思った。
それにしてもこの峠,バイクで走ったらさぞ気持ちいいだろう(ただし,自分の思うスピードで走れれば)。眺めはいいし,カーブも変化に富んでいるし。・・・いつか挑戦してみたい。
下界に下りた頃から眠気が差してきて,ついうとうと。気がついたらダナンの街に入っていた。そういえば,どこまで連れて行ってくれるのかを事前に確認していなかった。慌ててガイドブックを取り出し,地図と通りすぎる街路の表示を照らし合わせて現在地を確認。・・・ヴェトナムのいいところは,街路にはすべて固有の名がついていて,交差するところには必ずそれぞれの街路名表示板があるところだ。これは地理に不案内な外国人にはとてもありがたい。フランス植民地時代の名残りだろうか。
チャン・フー通りを抜けて,チャム彫刻博物館のすぐ側のツーリストらしい建物の側にバスは止まった(11:40)。ちょっと潮気を帯びた風が,かすかにプルメリアの匂いを乗せて僕を歓迎してくれた。
さて。
荷物を抱えて降りた僕は,ちょっと考えた。せっかく博物館の側に来たのだから,このまま入って見学するのもいい。でも荷物は重い。・・・そこへすかさず声をかけるのがシクロ(自転車を改造して前を二輪とし,その間に客用シートを設けた乗り物)なのだ。こういういいタイミングでかけてくれると,素直に乗ろうかという気になる。
どこへ? まずは宿。ダイア・ホテルを指名する。18〜25$で新しいというガイドブックの説明に乗ったわけだ。着いてみると,確かによさそうな外観。部屋も悪くないので即決,1日25$。部屋に荷物を置いて,身軽になった。
ハイヴァン峠越えでは,2005年6月に峠の下を抜けるトンネルが開通し,1時間以上の時間短縮となっている。物流関係はすべてトンネルを通っているのだろう。ツアーバスなどは・・・やはり昔からの名所だけに,今でも峠を上っているのだろうか?
BGM NOW Holst/2.Venus 〜 The Planets (Maazel/L'Orchestre National de France)[★★★★] |
- 2008/08/02(土) 09:25:25|
- ダナン,ホイアン(越南)
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